土を使わないハイドロカルチャー(水耕栽培)とは?特徴と土耕栽培との比較

見栄え・飾り方

透明な容器内のカラフルなボールに植えられた植物を見たことはないでしょうか。
これはハイドロカルチャー(水耕栽培)と呼び、インテリア性が高く、比較的手軽に植物を生育できる方法として知られています。
部屋にグリーンインテリアとして観葉植物を気軽に取り入れられる、小型の植物育成にオススメの方法です。
土を使った土耕栽培と比較して、ハイドロカルチャーのメリットやデメリット、特徴は何なのでしょうか。
これらについて、本記事で扱っていきます。

ハイドロカルチャーとは

部分的にみると「ハイドロ=水」「カルチャー=栽培」であり、ハイドロカルチャーは水耕栽培を意味します。
水耕栽培 というのは、土壌を用いずに植物を育てる栽培方法です。
ハイドロカルチャー は、水耕栽培の中でも土の代わりとなる植え込み材を用いる方法で、植え込み材にはハイドロボールという人工の石やジェルボール等が使用されます。
植物の植え込み材を用いない水耕栽培のことは 水栽培 と呼び、野菜の切れ端を再生させるリボベジ等がこれに該当します。
上記のように区別をせず「水耕栽培 = ハイドロカルチャー = 水栽培」とする場合もあります。
ここではそれぞれ区別するものとして、植物の植え込み材を必要とするハイドロカルチャーについて取り扱っていきます。

土耕栽培との比較

ハイドロカルチャーと一般的な土耕栽培との比較を表にすると下記の通りとなります。

ハイドロカルチャー土耕栽培
植え込み材ハイドロボール等
植え込み材の手入れ頻度半年~2年に1度1年~2年に1度
他の必要資材根腐れ防止剤とくになし
水やり頻度容器が空になってから2,3日土が乾いてから
肥料化学/液体有機・化学/固体・液体
底穴なし底穴なし

植え込み材(固形培地)

土壌の代わりとなる植物の植え込み材には、ハイドロボールを使うのが一般的です。
ハイドロボールはハイドロコーン、発砲煉石(はっぽうれんせき)、レカトンとも呼ばれ、粘土を高温焼成して人工的に作られた石・土です。
細かい穴がたくさん空いた多孔質状の構造をしており、酸素や水分がそこに入り込みます。
高温で人工的に作られているので、通常の土壌と異なり微生物がまったく存在しない無菌の石・土です。

他にも下記の通り、よく使用される植え込み材は多種あります。

  • ハイドロボール(ハイドロコーン、発砲煉石、レカトン): 粘土からつくられた人工培養土(石)
  • ジェリーボール(ジェりーポリマー、ジェルボール): 大部分が水分でできている半透明のやわらかいボール
  • カラーサンド: 色の付いた砂
  • ネオコール: 炭からつくられた人工用土(石)

いずれも人工的に作られており、無菌のため虫の発生が比較的起こりづらいと言えます(当然、その後の管理方法にもよりますが)。
ジェリーボールやカラーサンドにはさまざまな色が存在するので、透明な容器と組み合わせることで、おしゃれな見た目にできます。
ただしジェリーボールはほとんどが水のため、多肉植物のように乾燥気味の環境を好む植物には向いていません。

植え込み剤の手入れ頻度

ハイドロカルチャーでしばらく植物を育成していると鉢の中に汚れが蓄積していくため、定期的に手入れが必要になります。
頻度としては半年~2年に1度程度なので、1~2年に1度程度の土の入れ替えが必要な土耕栽培よりも、少しだけこまめに手を加える感覚かと思います。
ハイドロボール等の植え込み材は、水でよく洗浄することにより再利用可能です。

他の必要資材

ハイドロカルチャーでは、植え込み材以外にも根腐れ防止剤やイオン交換樹脂栄養剤等が必要になります。
通常の土耕栽培であれば土壌に住み着く微生物によって、植物の根からの老廃物を分解されますが、ハイドロカルチャーでは無菌の植え込み材を用いるためその機能が存在しません。
根腐れ防止剤またはイオン交換樹脂栄養剤を入れることにより、老廃物を吸着し減らしてくれるため、この問題を解決してくれます。

根腐れ防止剤

根腐れ防止剤には、アルミケイ酸塩であるゼオライトやケイ酸塩白土であるミリオン等が用いられます。
いずれも鉱石を加工した石であり、防止剤といっても薬品のようなものではありません。
植物の老廃物を吸着し水質浄化により根腐れを防ぐ他、水のpHを調整したり、ミネラルを与える機能を備えた商品が多いです。
ハイドロボール等の植え込み材の下に、適量敷き詰めて使用します。
水質浄化の効果は半年~1年程度持続します。

イオン交換樹脂栄養剤

イオン交換樹脂栄養剤と呼ばれる粒状の資材にも、水質洗浄の効果があるため根腐れ防止剤の代わりに使用できます。
こちらには栄養剤という名の通り肥料の役割も担っているため、栄養供給の効果が持続している間は、肥料を加える手間が省けます。
ただしイオン交換樹脂栄養剤の寿命は約3か月程度と、根腐れ防止剤に比べて短いです。
鉢の底に入れるか、植え込み材の上からパラパラとまく要領で使用します。

水やり頻度

ハイドロカルチャーでは、容器の1/4程度の水を与え、水が空になってから2, 3日後を目安に再度追加します。
冬の寒い時期は、容器の底が完全に乾燥してからにし、より乾燥気味に水やりをします。
常に水が溜まっている状態では、水が痛むことと、根が酸素を取り込めなくなることにより根腐れが起きやすくなってしまいます。
容器サイズや環境によっても変わりますが、土が乾いてから水を与える通常の土耕栽培と、同程度の水やり頻度になるかと思います。

肥料

肥料には原料別でみると化学(化成)肥料、有機肥料があり、形状別でみると固体肥料・液体肥料があります。
>>【観葉植物】肥料の種類と使い分け
通常の土耕栽培ではどの肥料でも使用できますが、ハイドロカルチャーでは水耕栽培用の肥料を用いるのが基本です。
これは区部でいうと化学(液体)肥料になります。
製品に記載の濃度に希釈し、春~秋(4~10月)の間に指定の頻度で与えれば良いですが、2週間~1か月程度の頻度になるかと思います。

協和 ハイポニカ液体肥料が有名で、2液を希釈して混合するタイプと希釈せずにストレートで使用できるタイプが存在します。
コスパとしては2液タイプが良いですが、手間を考えるとストレートタイプを選択するのも悪くありません。

イオン交換樹脂栄養剤も肥料として機能します。
こちらは化学(固体)肥料に該当し、3か月程度で効果が薄まります。

ハイドロカルチャーの大きな特徴は、水の中に根を漬け込んだ状態で生育することです。
つまり鉢には水が流れ出ないように、穴がないものを使用します。
通常土耕栽培では排水性を考慮し、鉢底穴のある鉢が使われますが、ハイドロカルチャーではその制限がないため、穴の空いていないガラス瓶や陶器等の容器を鉢として使用でき、飾り方の幅が広がります。
受け皿を用意する必要もありません。

メリット

虫が湧きにくい

ハイドロカルチャーに用いるハイドロボール等の植え込み材は、基本的に無菌・無臭です。
与える肥料として有機肥料を選択することはないはずなので、水を長期間溜めたまま放置する、ということをしなければほぼ虫は湧きません。
これはハイドロカルチャーだからというわけではなく、土耕栽培の場合でも有機肥料を使用しなければ同じです。

>>【観葉植物】肥料の種類と使い分け

インテリア性が高い

ハイドロカルチャーでは、与えた水を排水する必要はないため、穴のない容器が使用できます。
鉢として売られているもの以外にも、さまざまな容器が使えるため、デザインを部屋に合わせやすくなります。
また透明な容器を使った場合は、植え込み材まで見えるようになりますが、ハイドロカルチャーではジェリーボールやカラーサンドのようにカラフルな資材も利用できるため、より一層オシャレに飾れます。
透明容器では、水の残量がすぐに確認でき水やりのタイミングがわかりやすいため、初心者でも失敗しにくいというメリットもあります。

ハイドロボールが繰り返し使える

ハイドロボールに限らず、ハイドロカルチャーで使用する植え込み材は、基本的に洗うことで何度でも利用できます。
土壌の場合は、袋に入れ土壌改良剤を加えて直射日光下にしばらく放置することで再利用可能にはなりますが、それと比べて手軽に再生できると言えます。
また意外と困るのが土壌の廃棄で、多くの自治体では土の回収は行っていません(近くの山や公園等にばら撒くのは違法行為になる可能性があります)。
しかしハイドロボールの場合は不燃ごみとして廃棄できる場合が多いようで(自治体ごとに要確認)、不要になったときの扱いも安心です。

デメリット

植物が大きくなりにくい

ハイドロカルチャーは土耕栽培と比較して植物を成長しにくくします。
コンパクトなインテリアとして楽しむ場合は、植物が大きくなりすぎると邪魔になるためメリットとも捉えられますが、植物の成長を楽しみたい場合にはデメリットになります。

汚れやすい場合がある

透明な容器を使った場合によくある問題は、「意外と汚くなる」ということです。
透明容器は日光も通してしまうため、水の中にすぐ藻が発生してしまいます。
中の水が見える容器ではそれがすぐ見えてしまうので、見た目が悪くなります。
そのたびに容器を洗うのは、そのたびに植物を植え直さなければいけないので手間にもなりますし、植物に負担もかけます。

ややコストがかかる

一般的な培養土と比較すると、ハイドロボールの値段は高めに設定されています。
またハイドロカルチャーには根腐れ防止剤が必須となりますので、その分、通常の土耕栽培と比較してコストがかかると言えます。
ただしハイドロボール等の植え込み材は、手軽に再利用可能である点を考慮すると大きな差ではありません。

生育のポイント

ハイドロカルチャーで失敗しないためのポイントは下記になります。

  • 水やり: 容器からなくなった2,3日後に、器の1/4程度与える
  • 置き場所: 風通しの良い、直射日光の当たらない明るい場所に置く
  • 肥料: ハイドロカルチャー・水耕栽培専用のものを与える。

根にしばらく水を漬け込んだ状態にする水耕栽培ではありますが、あまりに長期間その状態が続くと根腐れが生じます。
少しの間、根が水に触れない期間を空けるぐらいがちょうど良いので、水の与えすぎに注意です。
容器が透明でなく、水の量がわかりづらい場合は水位計を使うとわかりやすいです。
鉢の深さや植物サイズにあったものを使ってみましょう。

また根に水が触れていない期間を設けたとしても、置き場所が狭くじめじめした場所では根腐れの確率が上がってしまいます。
土耕栽培の観葉植物と同様に、風通しの良いレースカーテン越しの場所に置くのが良いでしょう。
ただし直射日光の当たる場所では、葉焼けが起こるだけでなく、水温が上昇し根を痛めるリスクがあります。

ハイドロカルチャーに与える肥料は、「ハイドロカルチャー用」「水耕栽培用」として売られている専用のものを選びましょう。
製品に記載された通りの濃度に希釈し、春から秋にかけて与えます。
冬の間は生育が止まるので不要です。

まとめ

土壌を使用しない植物の栽培方法であるハイドロカルチャーの特徴について述べました。
水やりや追肥、植え込み材の手入れの頻度を考えると、通常の土耕栽培と比べてお世話が劇的に楽になるというわけではありませんが、オシャレに飾れるという点が大きく異なる点です。
机の上に小型のグリーンインテリアをちょこんと置きたい方は、検討してみる価値があるかと思います。

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