植物は土壌を使用しなくても育てることができます。
野菜の切れ端を水に浸して再生させる再生野菜や、土壌の代わりに人工的な土・砂を使ったハイドロカルチャーが身近な例です。
>> 土を使わないハイドロカルチャー(水耕栽培)とは?特徴と土耕栽培との比較
もっと効率良く大規模に野菜を育てるために、商業的にも使われる水耕栽培の方法を紹介します。
水耕栽培とは
水耕栽培は基本的に、水と液体肥料をあわせた培養液のみを使用します。
土壌は使わず、使ったとしても植物を保持するためだけに使用し、栄養分を保持する土壌は不要です。
植物の根に直接、水や酸素、栄養分を供給できるため、土壌栽培と比較して短期間で効率よく育てることが可能と言われています。
代表的な水耕栽培システム
以下で、代表的な水耕栽培システムを6つ紹介します。
底面給水システム
ウィッキングシステムとも呼ばれる底面給水システムでは、植物が植えてある培地と、培養液が貯まっている容器は分離されています。
培地からは紐や布等が垂れており、染み込み・毛細管現象により培養液を吸い上げて培地に供給する仕組みです。
無機質な土を使うハイドロカルチャーも、毛細管現象を使って水分・栄養分を供給するという点で、このシステムの一種と言えます(ハイドロカルチャーは通常の土耕栽培と水耕栽培の中間にあるため「半水耕栽培」と呼ばれることがあります)。
>> 土を使わないハイドロカルチャー(水耕栽培)とは?特徴と土耕栽培との比較
水耕栽培システムの中ではもっとも単純な構成になっており、ポンプや電気の不要なことがメリットです。
一方で、常に植物の根が培養液に触れていることで、根腐れや肥料過多、酸素不足になりやすい欠点があります。
DWCシステム
ディープウォーターカルチャー(DWC)システムは、容器に溜められた培養液へ根を浸し、エアポンプによって培養液中に酸素を供給する仕組みです。
エアレーションシステム、ウォーターカルチャーとも呼ばれます。
ポンプを必要としますが、比較的シンプルな構成のため安価にシステムを構築できます。
一方、ポンプに排出量の限界があるため、大容量の容器を使った大量の栽培には向いていません。
点滴システム
ドリップシステムとも呼ばれますが、植物を植えたロックウールやスラブといった固形培地に培養液を滴下する方式です。
培養液はタンクからポンプによって吸い上げられ、滴下後に過剰となった分はタンクに戻り循環します。
培養液の量は滴下に使用するだけあればよいため必要量が少量でよく、チューブで広範囲に供給することも容易なため大容量の栽培にも向いています。
ただし滴下量を調整するための手間がかかります。
エブ&フローシステム
固形培地を入れた容器の中に培養液を一気に汲み上げ、一定時間後にタンクへ排水する間欠循環式のシステムで、フラッド&ドレインシステムとも呼ばれます。
さまざまな種類の固形培地を使用でき汎用性が高いことと、植物の成長速度が比較的早く、収穫量の多いことが長所です。
しかし大量の培養液が必要で、また供給するタイミングの制御も必要なためタイマーやポンプの故障によって植物の生育が悪化するという欠点もあります。
薄膜水耕システム
NFT (Nutrient Film Technique) とも呼ばれますが、わずかに傾いた面に根を寝かせるように配置し、フィルム状に薄く培養液を循環させる方式です。
シート状に広がった根と多くの酸素が触れるため、植物の成長が速くなります。
一方で、ポンプの故障により植物の生育が悪化するだけでなく、根によって培養液の排水口が詰まる可能性のある点や、酸素・肥料欠乏を避けるために流量を調整する必要があるという短所があります。
根が触れる培養液を深くした湛液水耕法(DFT)と呼ばれる類似の方式もあり、ハイポニカ農法として知られる方法はこちらのDFTを採用しています。
エアロポニックシステム
噴霧耕、水気耕栽培と呼ばれることもありますが、植物の根へ霧状にした培養液を噴霧する方式になります。
多くの酸素が根に触れるため、植物の成長は速くなります。
しかし、頻繁な動作を必要とするノズルが詰まる等のトラブルが発生すると、途端に植物の生育が悪化してしまうという欠点があります。
まとめ
菜園を中心とした植物の生育に使用されることのある代表的な水耕栽培システムを6つ取り上げました。
通常の土耕栽培と比較すると、いずれも少量の水で成長速度の速い生育が期待できます。
その分、システム構築のための初期投資は大きくなりがちですが、小規模であれば手軽な金額で家庭用の栽培キッドも販売しています。
効率よく家庭菜園で野菜を育成してみたい方は導入を検討してみても良いでしょう。
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