勉強中の音楽はよくないの?効果的な音楽の使い方とは

環境作り

音楽を聞きながら勉強をする人は多いかと思いますが、果たしてそれは効率的なのでしょうか?結論から言うと、音楽は間違った使い方をすると効率を大きく落としてしまいます
たしかに、勉強時に音楽を聞くことには以下のようなメリットがあります。

  1. 脳のパフォーマンスが向上する。
  2. モチベーション・覚醒度がアップする。
  3. 周りの音をマスキングできる。

しかし1. に関しては個人差が非常に大きく、効果は限定的です。むしろ逆効果の場面のほうが多く、勉強をしているときに音楽を流すと効率が落ちる可能性が高いです。

効率が落ちるリスクを極力下げ、音楽を活用するには以下の方法があります。

  • 勉強中に邪魔にならない音楽を選ぶ
  • 音楽を聞くタイミングを勉強の前にする。

個人差が出にくいのは後者の方で、とくにオススメの方法です。

音楽を聞くメリット

最初にも述べましたが、勉強をする上で音楽を聞くことには、以下のようなメリットがあります。

  1. 脳のパフォーマンスが向上する(ただし限定的)。
  2. モチベーション・覚醒度がアップする。
  3. 周りの音をマスキングできる。

脳のパフォーマンスが向上する

音楽を聞くことのメリットの1つ目として、脳のパフォーマンスが向上するというものがあります
音楽を聞くことにより、短期記憶力や空間的・時間的推論力、問題解決力が向上すると言われています。次に紹介するモチベーション・覚醒度がアップする効果によって注意力が向上することも相まって、結果的に音楽を聞くと効率よく問題解決できるようになる可能性があります。

ただし、この効果が得られるのは限定的で、音楽を流すと逆にパフォーマンスの低下が起こることの方が多いです。詳細は後ほど説明します。

モチベーション・覚醒度がアップする

音楽を聞くことのメリットの2つ目として、モチベーション・覚醒度がアップするというものがあります
人は誰しも浮き沈みがあり、スムーズに勉強に取りかかれないときもあります。たとえば眠気や披露により勉強する気になれなかったり、イライラしているときには机に向かう気力も湧かないはずです。そんなときにテンションが上がる好きな曲を流すと、目が冴え、勉強も楽しいと感じたり嫌なことも忘れることができ、机に向かう時間の維持に役立つことが期待できます。

周りの音をマスキングできる

音楽を聞くことのメリットの3つ目は、周りの音をマスキング、つまり気にならないように覆い隠せるというものがあります
身の回りの生活音・環境音は、集中する妨げになりえます。たとえば工事の音、電車の音、人の話し声などが気になって、勉強が途切れ途切れになってしまったような経験はないでしょうか。そんなときに、イヤホンやヘッドホンを装着し、音楽を流すことで外部の音を遮断できるので、勉強に集中できるというわけです。音楽以外にも、自然音などでも同様の効果が得られます。ただし流す音が大きすぎると逆にそちらに気を取られるの注意です。

普通に音楽を聞くのは逆効果

普通に音楽を聞くのは逆効果

ここまで説明した通り、音楽を聞くことには勉強する上でプラスになる可能性があります。
しかし、注意しなければいけないのは「常に、誰にでも、どの音楽を聞いても効果がある」と考えてはいけないことです。自分が勉強中に音楽を聞くと集中できるのか、どの音楽を聞くのが良いのか、実際に試して確認してみる必要があります
その際には、気分ではなく実際にこなした勉強の量や質に着目しましょう。音楽によって気分が高まっただけで、実際には集中できていなかったということもあります。気分のみに着目すると音楽がプラスに働いているのか、マイナスに働いているのか判断を誤りかねません。

パフォーマンスが上がるのは限定的

音楽によって認知機能が向上したという内容の研究報告が存在しています。しかしその結果は個人差や音楽の種類にも大きく左右されます。そのため、人によっては音楽を聞くと集中しづらくなります。音楽選びも重要です。

音楽には認知機能を向上させる効果がある、とする研究報告がいくつか存在します。代表的なのは「モーツァルト効果」で、モーツァルト作曲「2台のピアノのためのソナタ ニ長調  KV448」を聞くことで空間的推論力がアップしたというものです。しかし音楽を聞くことで逆に認知機能が低下したという研究報告も数多く存在します。結果に一貫性がなく再現性が得られない要因は、個人の性格や音楽への認識(好み、よく知っているか等)が人それぞれ異なることや、音楽を聞いたあとに行うタスクの難易度によって効果が変わる可能性があるためだと考えられています。

このように音楽でパフォーマンスが上がるかどうかには個人差があります。人によっては音楽を聞いていたほうが集中しやすかったり、逆に無音のほうが集中できる場合もあります。どちらが良いのかは、自分自身で確かめるのが良いでしょう。
また聞く音楽の種類によっても当然、傾向は変わります。流す音楽を考えなしに決めていると、多くの場合は音楽に意識がそらされ集中力低下に繋がってしまいます。勉強中の音楽の選び方については、後ほど取り上げますので参考にしてみてください。

モチベーションが上がることで集中していると錯覚

気をつけなければならないのは、実際には集中できていないのに、音楽を流している方が集中できていると錯覚することです

音楽を聞くと、脳で快楽物質であるドーパミンが放出され、気分・やる気が高まります。この状態は居心地良く感じられます。勉強中に音楽を聞くと、気持ちよく勉強ができていると感じるはずです。この感覚は、集中できていると認識させます。たとえ、実際には勉強に集中できておらず、効率が落ちていたとしてもです。
確かに、行うタスクや人によっては、音楽を聞くことよって本当に集中できる場合もあります。しかし多くの場合、音楽は意識・脳のリソースを奪い、学習効率を低下させます。気持ちを激しく高ぶらせる音楽ほど、この影響はより大きくなります。
居心地良く勉強できているからと言って、必ずしも勉強に集中できているとは限りません。音楽を聞くことによって、問題を解く速度が低下している可能性があります。逆に速度は上がっていてもミスが増えていたり、記憶に深く定着していないこともありえます。もし集中できていると自己評価をしていても、それは勉強にではなく音楽を聞くことに対してかもしれません。

効果的な音楽の使い方

効果的な音楽の使い方

何も考えず、ただ自分の聞きたい音楽を勉強中に聞くのは効率的ではありません。多くの場合は音楽から悪影響を受けてしまいます。しかしこのようなデメリットが生じるリスクを極力小さくする方法があります

  • 方法1:勉強中に邪魔にならない音楽を選ぶ
  • 方法2:音楽を聞くタイミングを勉強の前にする。

上記を取り入れることによって、音楽を聞くことのメリットのみを享受できる可能性が高まります。とくに後者は多くの人に効果的なのでオススメです。

方法1:勉強中に邪魔にならない音楽を選ぶ

勉強中に音楽を流したいのであれば、音楽を適切に選ぶことでデメリットが生じるリスクを減らせます。集中したいときに流すべき音楽の特徴は、以下の通りです。

  • 音量が大きすぎない曲
  • 歌詞がない曲
  • 唐突に変化しない曲
  • 感情が揺さぶられない曲
  • メロディーやリズムが複雑でない曲
  • 聞き慣れている曲

もちろん、最終的にどの曲が良いのかには個人差があります。上記に当てはまる曲であっても集中の邪魔になったり、逆に当てはまらなくても集中できる場合もあります。あくまでも目安として考え、自分で試してみるのが良いでしょう。

音量が大きすぎない曲

音量を大きくして音楽を聞くとテンションが上がるかもしれません。テンポが速い場合にはなおさらです。しかしそのような音楽は自己主張が激しく、目の前のタスクから注意をそらされる可能性が高いです。勉強には適さないと言えるでしょう。具体的な例をあげると、ロックやヘヴィメタルのような曲が該当します。またテンポが遅い曲であっても、音量が大きすぎるだけでも集中への妨げになりやすいので、音を流す際にはいずれにしても音量設定に注意する必要があります。

歌詞がない曲

歌詞がある曲は人の意識を引き込みやすいです。声量は小さいのに、周りでヒソヒソ話が聞こえるとつい耳を傾けてしまうことはないでしょうか。言語を含む音が聞こえてくるとその意味を把握しようと、無意識により多くの脳のリソースを割くことになります。音楽を流すのであれば、インストゥルメンタルのような歌詞を含まないものにしましょう。

唐突に変化しない曲

途中で突然変化する曲は、その瞬間に集中が途切れる可能性が高くなります。電車や飛行機の中は騒音が激しいはずですが、基本的に一定の音のためずっと乗っていてもあまり気にならないかと思います。一方で工事の音や犬の吠え声などは突発的であり注意を引く音です。このような途中に大きな音の変化があると集中の妨げになります。BGMを流すのであれば、途中でテンポが変わったり大きな転調がある曲は避け、できるだけ曲調が一定のものが良いでしょう。曲中に語りセリフが入る曲も避けましょう。

感情が揺さぶられない曲

聞いていて感情が大きく揺さぶられるような曲も避けるべきです。たとえば、悲しい気持ちになり泣きたくなるような曲、逆に今にも走りそうなほど興奮する曲などです。昔の記憶と深く結びつき、思い出が引き起こされる曲も基本的によくありません。これらの曲は、気持ちや感情に大きく作用するほどの影響があり、意識を引き寄せつい聞き入ってしまいます。集中したときに聞くのであれば、ニュートラルな気持ちでいられるような曲にしましょう。ただし勉強の前であれば、テンションの上がる曲を聞くのは大いに有効です(後述)。

メロディーやリズムが複雑でない曲

口ずさむのも難しいほどに入り組んだ複雑なメロディー・リズムの音楽も、多くの注意を引くため勉強には適していません。不協和音を多用した奇抜な音楽なども同様です。普段あまり耳にしないような特殊な音楽は特徴的である分、聞き流すことが難しくなってしまいます。具体的には、ヘヴィメタルやラップなどが複雑なメロディー・リズムを多用する傾向にあるので避けるのが無難かもしれません。また、限られた人にのみ演奏が可能な高速で複雑なメロディーを演奏する超絶技巧を使った音楽も集中するときには不向きでしょう。

聞き慣れている曲

はじめて聞く、聞き慣れていない音楽も集中には適していません。人間は新しいものには敏感に反応しやすく、違和感を感じやすいものです。そのため聞き慣れていない音楽が耳に入ってくると、そちらに意識が逸れてしまいます。もし勉強中に音楽を流すのであれば、何回も聞いて慣れ親しんだ音楽にしましょう。空気のように、自分の周りに存在していてもまったく違和感を感じないようなものがベストです。
このことを踏まえると、流す音楽の数については、違う音楽を次々に流すよりは1つの音楽をずっとループ再生する方が集中しやすいとも言えるでしょう。

方法2:音楽を聞くタイミングを勉強の前にする

音楽を聞いたほうが集中できるのかどうかは、個人差に大きく依存します。しかし個人差が小さく、多くの人にとって役立つ音楽の聞き方があります。それは勉強の前に音楽を聞くという方法です

音楽には聞くとモチベーションがアップするというメリットがあります。上がったモチベーションは聞いた後もしばらく維持されるため、やる気が高まった状態で勉強に取りかかれます。また短期記憶のような認知能力のアップも期待されます。さらにこれを習慣化することで、音楽を聞くという行為が勉強に取り掛かるトリガーとなるため、そのときの気分や状況に左右されず安定的に集中する時間を確保できます。勉強の合間の休憩中に聞くのも効果的でしょう。

聞く曲は、テンションの上がるテンポの速い曲がオススメです。脳の処理速度の向上が期待できます。また裏拍を取りながら聞くことで、その後の状況判断能力のアップも期待できるようです。
以上のように音楽を流すのを勉強の前に制限することによって、勉強中は意識が逸らされないためデメリットは生じません。詳しくは以下の書籍で述べられています。

まとめ

まとめ

聞きたい曲をただ勉強中に聞くだけでは、勉強効率を大きく落とします。
音楽を聞くことのメリットとして

  1. 脳のパフォーマンスが向上する。
  2. モチベーション・覚醒度がアップする。
  3. 周りの音をマスキングできる。

以上が期待されます。しかし1. に関しては個人差が大きく、逆に集中力が低下して逆効果になることが多いためです。

音楽を聞くことによるデメリットをなくし、音楽を勉強に役立てるには以下の方法があります。

  • 勉強中に邪魔にならない音楽を選ぶ
  • 音楽を聞くタイミングを勉強の前にする。

とくに後者は個人差が出にくくオススメです。

参考文献

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