植物用の肥料として売られている商品がありますが、ものすごく数があり、初めのうちはどれを選べばよいかわからないと思います。
そこでここでは、肥料の基本的な分類・種類について整理し、それぞれの使い方や用途をまとめようと思います。
観葉植物用の肥料としては、大まかに化学肥料(固形・液体)と有機肥料(固形)に分類でき、それぞれの特徴を比較すると下記の表の通りになります。
化学肥料(固形) | 化学肥料(液体) | 有機肥料(固形) | |
---|---|---|---|
コスト | 低い | 低い | 高い |
栄養の供給速度 | やや遅い | 速い | 遅い |
土壌の改良効果 | なし | なし | あり |
匂い・虫の発生 | なし | なし | あり |
オススメの用途 | 元肥・追肥 | 追肥 | 元肥 |
原料による分類
肥料は原料によって大まかに、化学肥料と有機肥料の2種類に分類できます。
化学肥料
鉱石資源や化学燃料を原料として化学的に合成された肥料を化学肥料と呼びます。
化成肥料や無機肥料と呼ばれることもあります。
植物に必要な栄養素を調整して製造できるため、植物に与えたい栄養素をコントロールしやすいメリットがあります。
また植物がすぐ吸収できる状態になっているため、植物にすぐに栄養を送ることができます。
希釈して使用するタイプの製品も多く、これらは1個で何回も使用できるため、コストも低く抑えられます。
匂いも虫を寄り付ける成分もほとどんどないため、観葉植物にはとくに化学肥料がオススメと言えます、
一方で、与え続けることで土壌中の微生物が死滅するため、土壌が固くなり質の悪いものになってしまうデメリットがあります。
そのため定期的な植替えが重要になります。
また植物の吸収効率が高い成分でできており、根腐れしやすいため、与えるときは製品に記載の使用量を守るか、気持ち薄めにして使用してください。
有機肥料
家畜(牛や鶏等)の糞、葉っぱ・木くず、食品の食べ残し等の動植物性の有機物を原料とした肥料のことを有機肥料と呼びます。
微生物に分解されてから植物が吸収できるようになるため、ゆっくりと栄養を植物に送ることができます。
またその過程で微生物によって土壌の形質が改良される効果もあります。
有機肥料はゆっくりと吸収されることから、与えすぎによって根腐れが起きることも少ないです。
ただし匂いがあり、虫も寄せ付けやすいため、室内で育てる観葉植物には使用しづらいです。
また与える栄養素の配合成分を調整しにくい点もデメリットになります。
堆肥と有機肥料の違い
有機肥料も堆肥もどちらも似たようなものを原料にしています。
ただし使用目的が異なり、有機肥料は植物に栄養を与えるため、堆肥は土壌を改良するため に使用されます。
と言っても有機肥料でも土壌改良の効果は期待でき、逆に堆肥でも植物への栄養補給は可能です。
両者は発酵の度合が異なり、有機肥料は一般肥料として、堆肥は特殊肥料として区別して扱われますが、とても似た材料であると言えます。
形状による分類
肥料は形状にも種類があり、固体と液体の2種類が存在します。
固形肥料(緩効性肥料)
粉状、粒状、錠剤等の固体状態で植物に与える肥料を固形肥料と言います。
土に溶け出してから、または、分解されてから植物に栄養が供給されます。
ゆっくりと長期的な効果が期待でき、緩効性肥料 とも呼ばれます。
化学肥料と有機肥料のどちらにも固形肥料が存在します。
化学肥料には、植替え時の土に最初から混ぜこんでおく 元肥 用と、土の上に後から置いて使用する 追肥 用があります。
元肥用は直接植物の根に触れても肥料焼けしないよう、肥料の表面がコーティングされていたり、栄養成分が低く調整されていたりするため、間違えて追肥用を元肥に使用しないように注意しましょう。
有機肥料の場合は元肥と追肥の両方に使用できます。
液体肥料(即効性肥料)
液体状態で植物に与える肥料を液体肥料(液肥)と呼びます。
与えてからすぐに吸収されるため 速効性肥料 と言われることもあります。
短期間での効果が期待できますが、すぐに効果が切れてしまうため短期間で追加していくか、固形肥料との併用がオススメです。
基本的に追肥用として、土の上から水やりの感覚で与えます。
液体肥料というと、ほとんどは化学肥料になります。
液状または粉状のものを薄めて使用する希釈タイプと、そのままの濃度で使用できるストレートタイプがあります。
希釈タイプの方がたくさんの肥料を作り出せるため、コストパフォーマンスは良いですが、生育している植物が小さかったり少なかったりとあまり肥料が必要ない場合は、使いきれずに余ってしまう可能性もあります。
まずはストレートタイプを使用し、大量に消費することがわかったら希釈タイプに切り替えるのも良いかもしれません。
ストレートタイプには、容器ごと直接土に刺して使用するアンプルタイプも存在し、使用時の手間はかからなくなりますが、値段はさらに高くなります。
有機肥料にも液体肥料はありますが、観葉植物の肥料としてはあまり一般的でなく、コストも高くなります。
植物に必要な3要素
肥料を与える目的は植物に栄養を供給することです。
3要素と呼ばれる次の3つの元素がとくに重要な栄養素となります。
- 窒素 (N) : 葉や茎の成長を助ける(葉肥)
- リン (P) : 花や果実の成長を助ける(花肥)
- カリウム (K) : 根や植物全体の成長を助ける(根肥)
化学肥料のパッケージに記載されている10-8-8のような3つの数字は、この3要素の含有率を示しています。
「10-8-8」であれば、「窒素10% リン8% カリウム8%含有」という意味になります。
葉を楽しむ観葉植物では窒素を、花や果実を実らせる植物ではリンを、冬などの厳しい環境に備えて植物を強くするためにはカリウムを多めに含む肥料を与える、といったように植物の品種や状況に合わせて選択します。
「10-10-10」のように3要素が均等によく配合された肥料も、バランスが良く使いやすいです。
ただし3要素の合計が30%以上の肥料は高度化学肥料と呼び、観葉植物に与えるときには肥料焼けを起こすリスクが上がるため、与えるときには量と置く場所についてより一層気を使いましょう。
有機肥料も「油粕には窒素が、骨粉質類にはリンが、草木類にはカリウムが多い」というように、種類によって3要素の配合の傾向はあります。
化学肥料ほど厳密に組成を調整できないため、細かく数値化するのは難しくなります。
用途ごとの使い分け
観葉植物に与える肥料としては、虫が湧きにくく匂いも少ない化学肥料をオススメします。
3成分の配分は、どの植物にも使用できるバランスの良いタイプか、緑色の葉を楽しむ植物であれば窒素が多めのタイプを選ぶと良いでしょう。
元肥として
植物の根に直接触れても肥料焼けしないように、元肥に使う肥料は元肥用として売られているものを選びましょう。
植替えは1-2年に1度程度の頻度で行うのが良いですが、そのタイミングで元肥として固形肥料を混ぜ込みます。
新しく使う土に初めから元肥が含まれている場合は不要で、また、元肥のない土でも後からの追肥により植物に十分栄養を供給できるため必須ではありません。
元肥としては ハイポネックスジャパン マグァンプK が人気です。
3要素の配合は6-40-6でリンが多く入っているので、花を咲かせる植物の場合に使用すると良いかもしれません。
3種類の粒サイズがあり、大きいサイズでは長期間効果を期待できるのが特徴です(小粒は2か月、中粒は1年、大粒は2年)。
リンの多すぎても植物の被害は起こりづらいので、定期的に肥料を与えるのは面倒という人には中粒以上を検討してみる価値があります。
追肥として
固形肥料・液体肥料のどちらも追肥に使うことができ、幅広い肥料が利用できます。
通常は固形肥料を与え、暑くなる季節に液体肥料をプラスするように、両者の併用がオススメです。
春から秋の間は、固形肥料を土の上に置き肥として1-2か月に1度程度の頻度で与えます。
元肥を与えている場合は、その効果が切れるまで不要です。
生育期である夏やその直前の春には、より多くの肥料を消費するため、適正な濃度の液体肥料を2週間に1度程度与えます。
冬の間は土から養分を吸わなくなるので、固形肥料・液体肥料ともに与えるのは控えます。
また植物の根が新しい土壌にまだ慣れていない、植替え直後に追肥を行うのも止めましょう、
追肥に使用する固形肥料には、花ごころ グリーンそだちEX IBのチカラ、ハイポネックス 錠剤肥料 がオススメです。
どちらも錠剤タイプになっており、植物に直接触れないように離した土の上に置き肥として与えます。
効果は1か月程なので、切れるタイミングで与えます。
花ごころ グリーンそだちEX IBのチカラは10-10-10とバランスの良い3要素の組成となっており、ハイポネックス 錠剤肥料は10-8-8と窒素が多めの組成で、どちらも観葉植物に向いた配合となっています。
生育期に与える液体肥料には、ハイポネックス液肥 観葉植物用 をオススメします。
希釈不要のストレートタイプの液体肥料で手間がかかりません。
観葉植物向けに窒素が多めの配合で0.2-0.1-0.1となっています。
より手間を減らしたい方向けにアンプルタイプもあり、またよりコスパの高い希釈用の粉末タイプ(こちらの配合は7-4-4)もあるので、自分の状況に合わせて選択できる点も良いです。
水耕栽培・ハイドロカルチャー用として
土壌を使わない水耕栽培やハイドロカルチャー向けの肥料も売られています。
水耕栽培には水の中に適量加えて与え、ハイドロカルチャーには水やりの要領で与えます。
希釈タイプの液体肥料の 協和 ハイポニカ液体肥料 が有名ですが、3要素は4.0-3.8-9.4とカリウムが多く配合されており、植物をより丈夫になるように調整されています。
結晶化しないように2液に分かれており、希釈しながら混ぜ合わせる手間はありますが、これらを省略できるストレートタイプも売られています。
これらは追肥用の液体肥料として土壌にも使用できるため、水耕栽培やハイドロカルチャーに興味のある方は所持していても損はないでしょう。
まとめ
肥料は形状から「固形肥料」「液体肥料」に分類でき、原料からは「化学肥料」「有機肥料」に分類できます。
有機肥料は匂い、虫の発生の点においてあまり観葉植物向きではなく、化学肥料がオススメです。
化学肥料の中でも固形肥料は元肥と追肥用として、液体肥料は追肥用としての使用が向いています。
肥料は、植え替え時の元肥、日常的なお世話での追肥に使用します。
植え替えの方法については下記の記事を、
>> 【観葉植物】植え替えのタイミングと方法は?
日常的なお世話の方法については下記の記事を参照いただければと思います。
>> 【観葉植物】基本的な育て方・定期的なお世話
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